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Photoshopで動きを表現するコツ

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今回は、Photoshopで動いてる表現をする際のやり方を紹介します。

デザインをする際、必要な事は表現力です。どんなシチュエーションなのかという事は、作品全体の世界観を高め、よりリアルな描写と感じた時に見る側は惹き込まれてしまいます。

しかし、私が上記で述べた事柄は実は矛盾しています。実際は、非現実的であったり過大な表現であったりします。

というのは、人は印象的であったり、派手な事柄を記憶する際に自分なりに解釈をし、無意識により一層ハデな印象で記憶します。色の場合は印象色と言ったりします。

例えば、真っ赤な美味しそうな新鮮な林檎を想像してみてくださ81。

いかがでしょうか?

いったいどのような色を思い浮かべましたか?

普通のひとは、これでもかという程真っ赤な、ほとんど金赤に近い程鮮やかな赤を想像しますよね。

しかし、実際にホントに新鮮な林檎はそこまで赤くありません。そんなに鮮やかではないです、残念ながら。実際に撮影してみるとわかります。思いのほか、くすんだ色でしか撮影出来ませんし、実物と見比べながら色補正をすると、実に不味そうな林檎になります。美味しそうないつものアレにするには、かなり明るく鮮やかにする必要が発生します。そしてこの鮮やかな色こそが印象色になります。

人は、記憶する際に、無駄に、勝手により良いカタチで記憶します。逆に言い換えると、派手な表現でないとリアルにさえ感じてもらえないとうことになります。ハリウッド映画でなど用いられるVFXもこの過剰なリアル表現を用いることで、よりリアルな描写に魅せています。そう、見せるのではなく魅せるのです。

ちょっと思いついちゃいました。

このリアルなのにリアルを超えた過剰表現をしなければならない矛盾を勝手に命名します。

『リアル表現のパラドックス』と。

そしてここからが本題になります。

今回のお題、Photoshopで動きを表現するコツのお話に移ります。この動きの表現にも、先程述べた、『リアル表現のパラドックス』を用いることになります。世の中、ホントのリアルはどこにあるんでしょうね(笑)

Photoshopで動きを表現する

さて、Photoshopの話の前にカメラのお話に触れておきます。なぜかって?Photoshopは読んで字の如く、カメラ屋さんです。単なる写真合成ツールではありません。ですので、少なからずカメラやカメラマンが必要とするスキルが実は必要になります。

撮影をする際、実際に動いてる被写体と背景を全ピン(全体にピントを合わせる)で撮影するとどうなるでしょうか?

1.止まって見える

2.動いて見える

 

 

正解は、両方です。但し、シャッタースピード次第で、1にも2にもなります。動いている被写体よりも早いシャッタースピードで写真を撮れば、被写体は停止して写ります。反対に、被写体よりも遅いシャッタースピードで撮影した場合は、被写体は動いて(ブレて)写ります。

しかし、困った事になりました。動いている様を表現した結果、被写体がブレてしまって全く絵になりませんね。

そんな時、カメラマンはどうするか?

流し撮りをするんです!

流し撮りとは

固定したい被写体にレンズを向け、シャッターが開いている間はその位置がずれないように、その被写体の動きに合わせてカメラを動かす。背景は露光中にカメラが動いた分だけぶれ、被写体は止まっているように写る。

引用:Wikipedia

つまり、流し撮りをする事で、被写体自体はブレずに背景が動いてる感じを撮影だけで再現するのです。

イマイチ想像出来ない方は、電車に乗ってる風景を思い浮かべてください。走行中は中の風景は止まっているのに、外の風景は流れていきますよね。まさにアレです。

Photoshopを利用し、この技術を再現する事が、今回目指すポイントになります。そして、更に撮影だけでは決して再現不可能なまるで動いてるような過剰表現を与える事で、より一層のリアル(リアル表現のパラドックス)を実現します。

1.写真を用意する

この記事を読んでるという事は、少なからず、なんらかの写真に動きを付けたいと考えているかと思います。ですので、人や動物、乗物など何か動きを出したい対象があるはずですね。まずは、その対象となる画像を準備しましょう。印刷物やwebに使うのであれば、それぞれに見合った解像度のもので用意してください。

2.被写体を切り抜く

先程も述べた様に、被写体と背景で動きの差を付けますので、対象となる被写体を切り抜く必要があります。Photoshopで切り抜く場合は、クリッピングマスクを使うのが便利ですので、クリッピングマスクを作成するために対象の被写体のパスを作成していきます。

パスウィンドウをクリックした状態で、ツールボックスからペンツールをクリックし、被写体をパスで描いて行きましょう。中マドになる部分がある場合は、キチンと中マド部分も描いてください。

パスの作成が終わったら、パスウィンドウの中に描いたパスが、新規パスとして表示されているので、コレをダブルクリックし、必ずパスを保存しましょう。パスは、この保存を行わない場合、消えてしまいます。パスの作成に時間が掛かる方は大打撃です。パスの保存をしたら、必ずファイルの保存もしておきましょう。

パスの保存をしたら、レイヤーパレットを開きます。レイヤーパレットに画像が1枚背景という名称であります。コレをダブルクリックします。するとレイヤーに変換できます。現在のバージョン(AdobeCC)の場合は、背景をそのままマスクする事で勝手にレイヤーに変換されますが、以前のバージョンですと、先程行ったダブルクリックの作業が必須になりますので、注意してください。

画像をレイヤーに変換出来たら、先程のパスで使ったパスパレットを開き、さっき描いたパスをクリックします。そして、更にCommandキーを押しながらパスをクリックしてみましょう。

なんと、選択範囲が作成されましたね。続けてレイヤーパレットで先程変換したレイヤーをクリックし、パレット下にあるマスクをクリックします。するとウィンドウの中の画像の背景が無くなり、画像がマスクされましたね。

3.背景とレイヤーを分ける

先程、マスクをかけてしまった事によって、背景画像が無くなってしまいました。そこで、背景を復活させます。

マスクをかけたレイヤーをレイヤーパレットから選択し、このレイヤーをレイヤーパレット下部にある複製のアイコンにドラッグ・アンド・ドロップしましょう。すると同じものがレイヤーパレットにもうひとつ作成されます。

このままでは、両画像ともにマスクがかかった状態ですので、下側のレイヤーを選択し、クリッピングマスクをパレット右下にあるゴミ箱へドラッグ・アンド・ドロップします。これで、画像が元の状態になり、背景が復活しましたね。

一見、一番最初の状態と変わらない様に見えますが、背景と切り抜き画像の二重構造になっています。次の工程の為に、背景のレイヤーをもう1回複製しておきましょう。

4.背景をぼかす

ここから、前出の流し撮りを再現していきます。流し撮りのポイントは、背景が流れていて、被写体が止まっている事です。

ですので、背景のレイヤーを選択し、

フィルタ→ぼかし→移動を選択しクリックしましょう。移動のウィンドウが表示したら、角度と度合いを調整していきます。度合いを強くしていくと、よりスピード感を出すことが可能になります。

この移動ぼかしフィルターは、指定した角度にまっすぐ流れるようにボケます。ですので、背景に適用した場合は、まるで前出の流し撮りをした時のような背景を作る事ができます。

5.被写体にもぼかしを適用する

最後の仕上げとして、被写体にも先程の移動フィルターを適用します。本来の流し撮りでは、被写体にピントを全ピンで合わせていますので、被写体は微動だにせず写ります。しかし、グラフィック表現では、リアルを超えた過剰表現こそリアリティを感じますので、被写体に残像を作ります。

まずは、被写体のレイヤーを複製しましょう。そして、被写体レイヤーの上側は、一旦非表示にしておきます。

レイヤーパレットで下側の被写体のレイヤーを選択し、さらにマスクのアイコン部分を右クリックまたはcontrolキーを押しながら右クリックします。すると項目が表示されますので、その中からマスクを適用をクリックし、アラートもOKをクリックします。

マスクの型に画像が切り取られましたね。

なぜマスクを適用するかと言うと、フィルターをかける場合にマスクの状態では、フィルターの範囲が画像の大きさに依存してしまうからです。今回も、移動フィルターをかけるのですが、被写体の残像を表現する為に、被写体だけを切り抜いた型にする必要があったのです。

では、改めてこの画像にも移動フィルタをかけます。残像を表現する為、先程背景にかけた度合いよりも強めにかけます。

移動フィルターをかけたら、背景と馴染まない部分が出てきます。この点は、再度マスクを適用して、ぼかしてしまいます。マスクをかける際は、先程と同様にレイヤーパレットでCommandキーを押しながらクリックしレイヤーの型の選択範囲を作成してからマスクを適用しましょう。この方が何かと作業がスムーズになります。

先程、非表示にした上側のレイヤーを再度表示させます。

今回、残像を表現したいので、被写体に動きがある様に、先程ぼかしたレイヤーと馴染ませていきます。

 

これで、まるで動いているかの様な表現が完成しましたね。

バリエーションとしては、背景はぼかさずに被写体だけにこの表現をする事で、飛んでいる様なども実現する事が出来ますので、色々と参考にやってみましょう。

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