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グラフィックデザイナーの心得

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ドラマ、コンフィデンスマンJPは、冒頭に必ず、女優長澤まさみが読み上げる、著名人の名言があります。

その中に、ゴーギャンの言葉がありました。

「芸術は、盗作であるか、革命であるか、そのいずれかだ。」
by.ポール・ゴーギャン

さて、デザインも元々は芸術作品が商業利用される様になった物から現在に至ります。

アルフォンス・ミュシャはポスター作家として生計を立てていましたが、女優サラ・ベルナールとの出会いから次第に新しい芸術ポスターの時代を先駆けることになり、アールヌーボーの代表として知られていたミュシャの絵はアメリカやヨーロッパで広まり、アールヌーボーの代表作として認知されました。その後、彼の作品は数多くのアーティストやデザイナーに大きな影響を与えました。


デザイナーはその性質上、多くのものからインスピレーションや影響を受けます。ゴーギャンの言葉にあったように、芸術は盗作か革命かと言っても過言ではありませんが、デザインにおいては、盗作だけはNGです。所謂、パクリってやつですね。実は、私も発想や着眼点はパクった事はあります。が、最終的な成果物は、似て非なるものに仕上げます。発想はいくらパクってもOKなんです。デザインはあくまで最終的な意匠にこそ著作権がありますが、構想段階でパクるというのはもはや常套手段とも言えます。しかし、まるまるパクッたりしては訴えられる事になります。

2020年に開催される東京オリンピック。そんな東京オリンピックもまた、盗作疑惑から始まったとも言える騒ぎがありました。

この騒ぎの中心となったのは、東京オリンピックのロゴのデザインで一躍時の人となった、佐野研二郎というデザイナーその人です。現在もきっとどこかで活躍しているとは思いますが、彼は世間的に抹消されたも同然です。

彼がやってしまったのはゴーギャンの言うところの盗作の方をやってしまったからです。普段からギリギリな事をやっていたんだとは思います。私も、仕事に追われて更に予算も時間もないと言われたら、もしかしたら出来心で盗作まがいのデザインを提出してしまうかもしれません。初校は一旦ここから方針だけ絞ってくださいって場合はですけどね。

しかし、彼がやってしまったのは2つの大きなミスがありました。ひとつは国際大会であるオリンピックという世界が注目するモノだったと言う点です。そしてもうひとつのミスは、予算は実は100万円もあったという事です。さらに決定してしまえば、多くの版権による収入を手にする事になっていたはずです。流石に、この二点があったら、類似品が無いかのチェックに予算も掛けられますし、ましてや、企画書に使う画像などもしっかり購入したモノを利用するなど、気合いやお金の使い方が普通は違った筈なんです。しかし、彼は詰めが甘かったとしか言いようがありませんでした。

最初はベルギーのリエージュ劇場のロゴをデザインしたオリビエ・ドビ氏の元にデザインが似ていると伝えたのは友人でした。当初、ドビ氏のコメントは「第一印象は、偶然としか思えませんでした。僕と同じアイデアを持っている、日本人デザイナーがいるんだなと」という程度のものでしかなかったのです。

しかし、その後、多くの発言の矛盾が露呈してきてしまいます。佐野氏が臨んだ記者会見で、フジテレビの記者が「リエージュ劇場のデザインがアップされてるPinterestのサイトを見られたか?」という質問をしました。佐野氏は記者会見で「見ておりません!」と断言しましたが、後にネット上では衝撃的な情報が出回るという結果になってしまいました。

Pinterestを見てないといった佐野氏の事務所のメールアドレスでPinterestの登録がされていることは、瞬時にネット上で拡散されてしまいます。

さらには、エンブレムロゴの使用例の企画書の写真の盗用までが発覚してしまいます。個人ブログに使用した画像を加工して作成されていたのです。ここまで来たら踏んだり蹴ったりです。ネットでの炎上は加速するばかりでした。

さらにそんな渦中に、以前サントリーのノベルティで制作したトートバッグのデザインが完全な盗用であった事が露呈しました。これも、ネット上の住民による指摘によって次々に発覚したものでした。そして佐野氏はトートバッグの件について全面的にスタッフがやってしまったことを認める文書を公表するに至ったのです。

もうこうなってしまえば、信用はガタ落ち、多くの作品を残してきた彼の作品は、そのほとんどに対して盗作の疑惑を向けられる事態にまで発展してしまいました。ネット住民からは有名税を払えと言われてるかの如く、次々に盗作疑惑のある作品と類似品を比べる投稿がされていってしまいました。

勿論、東京オリンピックのロゴの件は、世論が許さないと言う事態になり白紙に。報酬も支払われず、残ったのは、盗作デザイナーと言うなんとも不名誉なレッテルだけ。かつて一世を風靡した彼の名声は地に落ちてしまったのです。

彼のケースは、実際に盗作をしていたかはさておき、疑惑を向けられる行ない自体、グラフィックデザイナーとして避けるべきでした。グラフィックデザインとは商用利用しお金を稼ぐ為の手段でしかありません。この点を我々デザイナーはしっかりと心得ていたいものです。

最後にもう一度、

「芸術は、盗作であるか、革命であるか、そのいずれかだ。」
by.ポール・ゴーギャン

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